利根川・江戸川・荒川など大きな川に囲まれた低い地域は、川の流れが非常に緩やかなため昔から浸水被害に悩まされてきました。
この被害を軽減するために、春日部市の小さな河川の水を江戸川に排出する世界最大級の地下放水路「首都圏外郭放水路」が作られました。
地下神殿と呼ばれる巨大な施設を見学できる人気のツアーがある事を知り参加して来ました。
その優れたシステムにより浸水被害が大きく減少しているようです。
見学の様子と、どのように力を発揮しているのかをお伝えしたいと思います。
首都圏外郭放水路のしくみ
利根川・江戸川・荒川に挟まれたこの地域は低いため河川が氾濫して水浸しになりやすく、昔から浸水被害に悩まされていました。
特に小さな川が氾濫しやすく、大きな川は上流の水を集めて、遅れて水位が上昇してくるという特徴があります。
そこで、埼玉県春日部市にある倉松川や大落古利根川や中川など、増水した5つの中小河川の水を江戸川に排出するという施設が首都圏外郭放水路です。
中小河川の水位が規定以上に上がると左から4カ所の立坑(たてこう)に流れ込み、地下トンネルを通って7番の調圧水槽に溜ります。
調圧水槽の水位が規定以上に上がったら、強力な排水ポンプで江戸川に放水されます。
これによって、中小河川の氾濫は防止され、江戸川が増水してくる前に放水が完了してしまいます。
これは比較的水量の多い中川の第3立坑です。
普段はこのような感じですが、大雨が降って水位が上がると左の方に流れて行きます。
氾濫するより低い高さに設定された堤防を越えると、立坑にどんどん水が流れ込んで行きます。
この第3立坑は内径31.6m、深さ71mあり、横に繋がるトンネルは内径約10m、長さ約6㎞という大規模な施設です。
このような場所が国道16号沿いに4カ所あって、その先に177m×18m×78mの巨大水槽があります。
実際に地下施設を見学できるコース
国土交通省江戸川河川事務所 首都圏外郭放水路 龍Q館では地下施設の見学を実施しています。
調圧水槽を見学する「地下神殿コース」が基本ですが、要望に応え「迫力満点!立坑体験コース」「深部を探る!ポンプ堪能コース」「見どころ満載!インペラ探検コース」といったグレードアップされたコースもあります。
詳細・空席状況・予約はこちら▼
https://gaikaku.jp/course/
今回は「迫力満点!立坑体験コース」に参加しました。
高所恐怖症と巨大な人工物恐怖症の私ですが、申告しないで参加しています(汗)
地下神殿へ
茶色い建物で説明を聞いてから調圧水槽(地下神殿)へ入って行きます。
このグランドの下が調圧水槽で、茶色い建物に排水ポンプがあってそのすぐ先に江戸川があります。
階段を116段(ビル5~6階相当)を下りて水槽の底まで行けます。
大迫力です。
川の水位が上がって立坑から取り込まれた水がここに流れてきて、下の線を越えてくると排出ポンプが作動ます。
排出能力は最大で小学校の25mプールが1秒で空になってしまう程だとか。
このモーターは飛行機用に開発されたガスタービンが使われています。
柱には水の跡がついてますね。
2023年は6月の台風の時に作動しているそうです。
ポンプ停止水位以下の水については、後日ゆっくりと元の川に放水するのだそうです。
第1立坑見学
一旦地上まで上がり、次は第1立坑見学です。
第1立坑は第2~第5立坑へ流れ込んだ川の水が流れ込んで来る所で、スペースシャトルや自由の女神がすっぽり入ってしまう大きさです。
下に見える水面の下には内径10メートルの横トンネルがあって、他の立坑の水位が上がるとここの水面が上昇して来ます。
そして先ほどの調圧水槽に流れ込んで行きます。
大雨の時にはここが満タンになってしまうのですから、本当にビビります。
見学中はアプリをダウンロードすると、水が流れ込んで来て水の底になる様子が体感できます。
こコースの見どころは作業用階段を途中まで下りて写真撮影をする事と、最上部のキャットウオークと言われる通路を1周しながらガイドしてもらえるという事。
「高い所が苦手な方は言って下さいね」と何度も言われて我慢していましたが、さすがに「苦手です」と言ってしまいました。
高い所が苦手だと何が違うのかと言うと、安全帯をつけたら途中で外せないので、怖くて進めなくなっても戻って来れないという事で、一番最後になるという事でした。
みんな平気で乗り出して撮影してますが、私は怖すぎて柵の隙間や足の下の小さな穴から撮影していました。
もう汗びっしょり(汗)
携帯は首掛けのあるストラップをお勧めします。
首都圏外郭放水路 龍Q館の場所
埼玉県春日部市上金崎720
048-746-0748
https://gaikaku.jp/
まとめ
線状降水帯や台風による被害が年々増えてきているように思えます。
災害に弱い地域は、一定以上の条件になると何度でも同じ被害を受ける事となります。
そんな中、その災害が起こらないための施設ができるという事は、そこで暮らす人にとって大きな安心材料となります。
その1つである「首都圏外郭放水路」の見学をする事によって、素晴らしい取り組みを知る事ができました。