25年前,宿泊施設を経営する事になりました。ちょうど雑誌広告からホームページと集客の方法が変わってきた頃です。
しかし、パソコンの普及により、そこら中に専門家に作ってもらったクオリティの高いホームページが出てくると全くお客さんが来なくなりました。
そこまでの話はこちらのページに書きました。
そこで私は楽天トラベルを本格的にやることになりますが、宿泊プランを考える中で根本的に見直さなければいけない事が発生します。
小さな宿には大変な時代が来ています。昔ながらのやり方で閉業した仲間をたくさん見てきました。
「何か手はないか?」と思っている宿主のヒントになればと思い、10年で楽天トラベルアワードを3回受賞するに至った経緯を紹介していきます。
電話予約が主流だった頃
それまでは電話予約が主流で1つの予約が成立するまでに多くのやり取りが必要でした。
「〇月〇日はあいてますか?」「料金は?」「風呂はどんなですか?」「ごはん足りますか?」「刺身の別注した方がいいですか?」「駐車場は近いですか?」などなど…。質問ごとひと通り説明して「分かりました、じゃあ」って切られてしまう事がほとんどで。
私の宿は昔から基本料金にも刺身が付きますが、舟盛りやサザエのつぼ焼きなどをプラスする事が可能で「舟盛りは5000円からなので、2人なら皿盛りになります」というようなやり取りがあって、「2人で5000円の舟盛りを食べたいけど大丈夫ですか」という質問が多かったです。
民宿なんてたいした料理出ないだろうから
「民宿なんかたいした料理が出ない」という先入観を持っている人も多かったように感じます。
母は、「最近の電話は難しいし、分からないと怒る人がいるから出たくない」という事になってしまいました。
そして、ホームページの空室状況やブログでよくある質問に答えるなど情報発信をして、ある程度の日程を決めてから宿の情報を踏まえて電話をしてきてくれるようにしようとしましたが、なかなかうまくいきませんでした。
電話先で迷っているお客様と会話をしていて「何かいい手がないかなあ?」と考えます。
2人客をどうするか?
私が高校生の頃は友達が2人バイトに来ていて、食事は部屋に運びます。それもお運びに入れて置いて来るだけ。配膳はお客様がやります。朝食は寝てようが構わずにポンと置いて来ます。
1階の大部屋は団体様がごろ寝で、常連様ともなると皿洗いを手伝ってくれたりして。
それが民宿本来の姿なのですが、私がやるようになった頃にはそういうお客様がほとんどいなくなります。引き換えに2名様の問い合わせが圧倒的に多くなります。
昔ながらの宿は2名はとらない所が多かったです。詰めれば30人入る宿で2人客をとると10人で満室になってしまいますし、ファミリーや宴会というノリではなくラブホのイメージになってしまいますよね。
特に若い2人客はチェックアウト過ぎても起きて来ないとか、海水浴シーズンなど早く来て「荷物だけでも置かせてくれないか」というお客様でごった返している時もマイペース。結局強めの言葉を使ってしまいます。
今思い出すと「2人で泊まれますか?」という電話に「その日は満室です」と断っていました。
2人客受け入れOKの宿に
ずいぶん悩みましたが、これからは2人客が主流となるだろうと、逆に次のような方針でいこうと決めました。
・2人でもOKの宿
・子連れのお客様に選んでもらえるような宿
・客単価を上げる
・平日も満室にする
2人用の舟を購入
まずはかっぱ橋に行って2人用の舟を探しました。1つ7500円だったかな?4つ必要でしたがお金がなくて2つしか買えませんでした。うまくいく自信もなかったので。
ボタン1つで予約成立させよう
楽天トラベルでプラン名の考え方など勉強している所でしたので、基本料金+オプションという事をやめてオプション込み価格のプランを選んで「舟盛りプラン」というボタンを押すと予約が成立するようにしました。
レギュラープランは普通のお刺身がつきますが、グレードアップしたプランは普通のお刺身が舟盛りになるという事ですね。
さらには「あわびの踊り焼きつきプラン」、「舟盛りとあわびが両方つくプラン」、各プランの「朝食なし」など。
メルマガ会員だけのシークレットプラン
今はこの機能はありませんが楽天にはメルマガ機能がありました。
宿のページから申し込む事に加え、懸賞に応募、宿泊すると会員登録されます。その会員にメールを送る事ができるのですが、私が気に入ったのは送る対象を絞ることができる機能です。
10代とか20代などの年齢、住んでいる県、宿泊した月など。その人数が表示されていました。それによって泊まってくれる人や興味を持ってくれる人の傾向が分かりました。
意外にも「30代の千葉県内」がほとんどでした。
コロナの最初の頃、「東京からのキャンセル料がGoToから補償される」という時、全キャンセルだったのにも関わらず、ほとんど千葉県のお客様だったので何千円しかもらえなかったという(汗)
そんな事もありましたが、ターゲットを絞る方法を考えます。
幼児連れの母さんが安心して過ごせる環境
30代を中心とした小さなお子様連れのお客様に選んでもらえる宿に変えていきます。
まず自分が幼児2人の親でしたので、お客様目線になりやすかったと思います。
子連れの宿泊であると嬉しい事を徹底的に考えました。ウチの子は手がかかりましたから自分たちが泊まってありがたかったという事がほとんどです。
子連れ旅にあると嬉しい物を揃えた
一気にではありませんが、徐々に増えていきます。
寝室と食事部屋には
・子供用の椅子
・DVDデッキ
・子供が届く消毒
・ウエットティッシュとティッシュ
・子供用の食器
共用エリアには
・子供用のDVDソフト
・木製の積み木
・パズル、ブロック、オセロ、トランプなど
・絵本、漫画
・子供用浴衣(大、中、小)
・子供用便座(大人だけのお客様に配慮して全部のトイレには設置せず)
・子供が寝てから大人が本を読む等のためのライトも置きました。
・玄関をの照明を明るくしたら、チェックイン時いきなり泣く子がいなくなりました。
・赤ちゃんの組は食事部屋に小さな布団を用意しました。
・残ったご飯をおにぎりにするためのラップと塩。
まだまだあると思いますが、このくらいは用意していました。
その他にも出来る事は何でもやりました
「食事は取り分けで」と説明はしてあるのですが、実際は子供の好きなエビフライや唐揚げなどをおまけで出すとか。
「子供の食べる物はありますか?」「子供がけっこう食べるので心配」という電話をかけてくるお客様が多かったので、最初からそのつもりで用意するようになりました。
これは好評でした。
「部屋食可能ですか?」と問い合わせしてくるお客様は子供が悪さをしないか心配。お子様も元気いっぱいです。夜中も起こしたくないでしょうから奥の部屋にするなどしました。
お子様連れは部屋食が安心だと思うのですが、食事部屋から戻ったらきれいに布団が敷いてあるのが、やはり主婦としては一番うれしいようですね。そのために出来るだけ食事部屋で食べてもらって、食事中に寝室を整えるというようにしました。出来るだけですが。
その分、食事部屋で子供が落ち着くように気を使いました。それと、散らかった部屋を整理してびしっと布団を敷くのは大変でしたが。
要望や心配事を予め解決しておくという方針をもって、ひとつひとつ増やしていくという感じに考えれば、だんだんそういうカラーになって行くのかなって思います。
「この子がまた行きたいっていうので今年も来ました」というお客様を、少しでも増やしてリピーターを作ろうと取り組みます。
そのために、出来るだけ親がいないタイミングで子供の名前を聞く事。それと家族構成やエピソードを記録しておく事を心がけました。次に来た時に「〇〇君背伸びたね」なんて出迎えれば親戚の家にでも来たかのような気持ちになりますもんね。
色々と取り組みましたけど、物を揃えるよりも心構えが大切だなって思います。
勉強のために評価の高い宿と低い宿に泊まってみましたが、高級とか関係なく明らかに評価の高い宿と低い宿の差を感じました。物よりも心だなって。そこを次の記事で追及していきます。
まとめ
予約サイトに掲載するプランを作成するのに大切な事は
・他がやらない事をやる。
・ターゲットを絞る事。
・ターゲットに喜ばれる施設にする事。
・お客様の声に耳を傾けひとつずつ形にして積み上げていく事。
これらについてのお話でした。
お客様の声(クチコミ)を大切にした結果ついにアワード受賞につながります。
次回はそれまでに取り組んだ事を紹介していきたいと思います。
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