「波を彫ったら日本一」と言われた宮彫師である「波の伊八」こと武志伊八郎信由(たけしいはちろうよしのぶ)は、1752年千葉県鴨川市に生まれ、神社やお寺などの彫り物を多くの手がけました。
特に波と龍の作品は有名で「関東に行ったら波を彫るな」と噂になったとか。
葛飾北斎や外国のアーティストにも、立体的な作品が参考にされたと言われています。
五代続きましたが、特に初代の作品が多く残されていて評価も高いです。
伊八の作品は千葉県南部に多く見られますが、今回は千葉の真ん中あたり、アクアラインから圏央道を降りて近いエリアである長生郡・いすみ市を取材して来ました。
代表作とも言える作品があって見ごたえありです。
飯尾寺(長柄)
最初は圏央道「茂原長柄スマートIC」すぐの「威王山 飯尾寺」です。
田園風景の高台に建つお寺で眺めが良いです。普段は誰もいない感じでした。
このように各所に伊八の作品が使われていますが、田園風景の中に赤と彫り物がとても映えます。龍は本堂の中にありました。
「親子龍」という作品です。龍が2体いますね。すごい迫力です。尻尾がはみ出てますよね。こういう所が伊八の作品の特徴ですよね。
お賽銭箱に手を伸ばす小さな隙間からなの正面からは見れませんが、これが「松に鶴」でしょうか。これもビシッと収まっています。
最初の飯尾寺はとても落ち着く雰囲気でもう少しいたかったですが次を目指します。
千葉県長生郡長柄町山根821
称念寺(長南)
飯尾寺から車で15分ほど、圏央道「茂原長南IC」からすぐの称念寺。こちらにはすごい龍がいます。
本堂の彫り物の存在感がすごいです。龍はガラスの向こうにいます。
「龍三態の図 欄間三間一面」は初代伊八の晩年の作品だそうです。
欄間三か所に渡る作品で左右から龍が顔を出しています。真ん中の龍の尻尾は天井まで巻き上がっています。
枠に収まりきらない立体的な技法がいかんなく発揮された、初代伊八の集大成的な作品ではないでしょうか。
私は初めて着たとき、あまりに衝撃的で動けなくなってしまいました。本当に美しいお寺です。
千葉県長生郡長南町千田1370-1
飯縄寺(いすみ)
長南町の称念寺から車で30分ほど走り、太東埼灯台近くの飯縄寺には「牛若丸と大天狗の図」という初代伊八の代表作といわれる作品があります。
天狗のお寺と言われていて、境内には3つの結界が張ってあるとか。第1の結界の鳥居をを潜るとイライラが除かれ、第2の結界の石垣では強欲が除かれ、第3の結界では死の恐怖が除かれ、そして本堂にお参りすると良い事をしたくなると言われているそうです。
牛若丸と大天狗の図です。鞍馬山で牛若丸が天狗より巻物を伝授される図で、高さ1メートル、幅4メートルのけやきの1枚板に彫られています。
木目の向きも計算されているのだとか。確かに足や腕の筋肉など感じが木目で表されています。
下から見ると立体感がよくわかりますね。大きさもそうですが厚さもありますね。
千葉県いすみ市岬町和泉2935−1
拝観時間10時~16時
拝観料300円
行元寺(いすみ)
飯縄寺から車で30分、行元寺には「波に宝珠」という有名な作品があります。葛飾北斎が参考にしたと言われている波の彫刻です。覗き画法といって当時は珍しく、北斎をはじめ西洋の巨匠もその手法を取り入れているとの事。
公開は土曜日・日曜日・祝日の午後1時~3時30分です。
この日は平日でしたので見る事ができませんでしたが、参道には説明が多く掲示してあって波の伊八についてもっと深く知ることができました。
千葉県いすみ市荻原2136
まとめ
ここまでの移動時間の合計が90分ほど。大多喜までは10分、大多喜から市原鶴舞ICまでは15分ほどで行けます。
波の伊八の作品が多い地域の北部エリアを見て回りました。
その他にも睦沢町の八坂神社・いすみ市の光福寺・大多喜町の宝聚院・市原市の真高寺などにもあるようです。