千葉県君津市久留里地区は久留里城の城下町として当時の面影を残す街並みと、ローカル線の停車駅や圏央道木更津東インターから近く、房総観光で人気上昇中の立ち寄りスポットです。
この久留里周辺を車で走っていると、豊富な水を自噴する井戸をよく見かけます。
そのせいか酒蔵が5つもあります。
井戸というと地下を流れる水をくみ上げるというイメージですが、なぜこのように自ら噴き出しているのか不思議でなりませんでした。
そして、地元の観光協会が「久留里の名水」で地域を盛り上げようとPRしているという事を知り、この自噴井戸について聞いて来ました。
その中で「上総掘りという掘削方法によって縄文時代の水が湧き出ている」というスケールの大きな話を聞くことが出来ました。
久留里の自噴井戸
久留里地区一帯にはこのように自ら湧き出す井戸がたくさんあって、地元住民の生活に使われています。
久留里駅前の観光交流センター前にある水汲み場です。
公共の場所という事で多くの方がペットボトルに水を汲んで持ち帰って行きます。
小櫃地区の道の駅「味楽井おびつ店」にもこのような水汲み場があります。
久留里の街を歩くだけでもいくつかの自噴井戸を見る事が出来ます。
こちらは「新町の井戸」です。
少し路地を入った所にありますが、道中の蔵や古い建物が残っていて興味深いです。
鴨川方面に少し行くと久留里神社があり、神社の近くにあるのが「雨城庵」の井戸です。
こちらは整備されていて車も何台か停められます。
このように24時間こんこんと湧き出ているのです。
モーターで汲み上げている訳ではないんですよ。
「高澤家の名水」は民家の庭先にあります。
雨城庵の近くにある「田丸家」の井戸です。
久留里の酒蔵
そして、久留里街道沿いにある酒蔵「福祝」の藤平酒造にも名水が湧き出ています。
藤井酒造の向かいには「吉寿」の吉崎酒造、街道沿いにもう1蔵「天乃原」「房総ウイスキー」の須藤本家、少し奥に入ると「飛鶴」の森酒造店、「峰の精」の宮崎酒造店があります。
狭い範囲にこれだけの酒蔵があるという事は水が良い証拠ですね。
上総掘りについて
なぜこのように井戸水が自噴しているかという事ですが、この土地の特徴と「上総掘り」という技術により可能になったという事です。
このあたりの川は地面を削って低い所を蛇行しながら流れているため、田んぼに水を引くには大規模な揚水施設がなければなりません。
または井戸を掘らなくてはなりませんが、当時の技術は重い鉄の棒を地面に突き刺し、ある程度進むとさらに鉄の棒を継ぎ足して掘り進む方法でした。
この方法では重い鉄の棒を引き抜かなければならず、多くの人の手が必要でした。
鉄の棒が外れてしまうなどの失敗も多く、30mほどまでしか掘る事が出来ませんでした。
その深さでは十分な水が引けず、枯れてしまう事も多かったのだそうです。
そして「もっと深く掘れる技術」として考えられたのが「上総掘り」という技術です。
上総掘りは鉄の棒の代わりに竹を割った竹ひごを使い、先端に掘り鉄管という物と泥を吸い上げるスイコを組み合わせた物で、最終的には2~3人で500m以上も掘る事が出来るようになりました。
その事によって自噴井戸が掘れるようになったわけですが、なぜそうなったのかと言うと鹿野山や清澄山で降った雨が地面に浸透し、東京湾に向かって斜めの地層沿いに流れて久留里あたりの地下深くに溜っているからなのです。
その地下水は久留里よりも高い場所まで溜っているので圧がかかっています。
久留里の地下は砂の層なので浅い所には水は無く、深く掘る事によって高い山からの圧がかかった地下水が噴き出すという仕組みです。
そして、農業用水から飲料水まで使える、豊富で質の良い水が使えるようになりました。
「この地下水は1000年以上前に降った雨」だと考えられています。
縄文時代とか弥生時代の水という、とてつもなくロマンのある話ですね。
久留里観光交流センター
千葉県君津市久留里市場195-4
0439-27-2875
https://www.city.kimitsu.lg.jp/site/kanko/2188.html
まずは久留里駅前にある久留里観光交流センターに立ち寄る事をおすすめします。
井戸のマップや説明、久留里の5つの酒蔵+上総の2蔵の日本酒を1杯200円で飲み比べする事も出来ます。
目の前には水汲み場もあります。
また、知る人ぞ知る町中華の名店「喜楽飯店」もすぐそばです。
まとめ
上総掘りの技術は全国に広がり、大多喜町では天然ガスが発見されました。
また、温泉や石油の採掘に貢献し、アジアやアフリカで井戸を掘り当てたりと、多くの場所で役に立っています。
千葉県もちょうど真ん中にある久留里は千葉観光の通り道でもありますので、ぜひ立ち寄ってみて下さい。
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