50代にして「今年こそ富士山に登る」と宣言して富士登山解禁までの1ヶ月、何ができるかと考えた結果「とにかくどこか登ってみよう」という事で、山梨県の「七面山」に挑戦する事になりました。
日蓮宗の家では登頂の際に使った杖と御主題を持って棺桶に入るという習慣があって、「死ぬまでに1度は登っておかなければ」と言われいました。
今は家族葬が多いしグッズは葬儀屋が全部用意してくれるので、そういう風習は薄れているのかなって思います。
しかし、私の親世代の人たちが当時の事について話しているのを聞いていて、登りたいと思いました。
「わらじ銭」という事で餞別を預かりましたので、今はもう登れない人たちのためにも頑張ります。
「この人たちが登れたんだから行けるだろう」という、富士山の前の練習てきな考えはあったと思いますが実際は本当に大変でした。
駐車場等の情報はこちらです
★身延 七面山 表参道より登山開始 羽衣駐車場と白糸の滝
七面山の登山ルート
七面山の登山には5時間~6時間かかるという情報があります。
日蓮聖人が叶わなかった七面山登詣を、弟子の日朗上人が道なき道を行き登頂したのが北参道らしいし、奥之院は敬慎院から北参道を少し下った所にあるため、神通坊から裏街道を登ろうか迷いました。
しかし、「熊出没注意」という情報もあって、人が多そうな表参道を登る事にしました。
8:30 羽衣登山口から出発
初めての本格的な登山です。
七面大明神が宿る法華経の山ですので、心に煩悩や穢れがあっては達成できないという気持ちからか、自然に大きく頭を下げて無事を祈りました。
登山道はこのように整備されています。
けっこう急で、いきなり足がパンパンになりました。
曲がり角にある灯篭に1丁目と書かれていて、日蓮宗のありがたい言葉が書かれていいます。
8:40 神力坊(2丁目)
10分で神力坊に到着しました。
ここは2丁目なので、1丁目5分のペースです。
最初の休憩所は「神力坊」
お茶を飲みながら休憩する場所がありました。
「帰りにここでゆっくりしよう」と思いながら通過します。
ここには、女人禁制の七面山に女性で初めて登る事を許された徳川家康側室の「養珠院(お万の方)」が使用した棒が現存しているらしいです。
帰って来てから知った(汗)
七面山といえば杖ですが、ここで800円で販売されていました。
これをを使って登り切り、山頂の宿坊で焼き印を押してもらうのがこの山に登る1つの目的でもあります。
下山の時に返却すれば使ってもいいという棒もありました。
いずれにしても棒がなければきついです。
階段と急な坂道の連続で、ジグザグを2つ登ると灯篭があって1丁目となります。
何丁目まで行けばいいのやら。
所々にベンチがあって休憩できますが、後ろに倒れたらどこまで落ちちゃうんだろうってほどの場所が多いので気を付けましょう。
9:30 出発から1時間で10丁目
かなり疲れてきました。
10:10 肝心坊(13丁目)
夜中に千葉県勝浦市を車で出発して、途中のサービスエリアでおにぎりを4個買い2個食べて登って来ましたが、早くも空腹感を感じ、ここで黒蜜のトコロテンを食べるため「黒蜜 黒蜜」と唱えながらここまで来ました。
しかし、営業してなかった(汗)
おにぎり2個で山頂まで行けるか不安になって来ました。
ちなみに下山時には感じのいいお姉さんがお茶を入れてくれたり、とてもいい雰囲気でした。
中央道をおりてからここまでの間、コンビニがなかったような気がしますので、少し遠回りになっても食料は確保しておいた方がいいですよ。
ここで若いお母さんと小学生くらいの男の子に会いましたが、お母さんがかなりばてている様子でした。
「上まで行けるのかな?」と思っていたら翌日の下山にもここにいました。
下の神力坊や登山口周辺にも泊まれる所があるので、行ける所まで行ってこのあたりで泊まるというやり方もあるのかな?と思いました。
ここまではスマホで写真を撮る頻度が多かったので、ズボンのポケットにスマホを入れてました。
財布も車のカギもズボンのポケット。
しかも汗でズボンが貼りついて足が上がりません。
水を飲む頻度も増えてきて、その度にリュックを降ろして休憩になってしまいます。
ペットボトルを手で持っているとトレッキングポールが使いにくい。
そして、この辺りで「このままじゃ登れない」と思い始めます。
「引き返すのならこの辺りかな?」と思いますが、次の坊まで頑張ってみようと思いました。
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10:30 中適坊(23丁目)
2時間経過、なんだかんだ1丁目あたり休憩込み5分のペースで来ています。
登山道の途中にこういう場所が突如現れる感じっていいなって思いました。
ここでお坊さんのような方と会いましたが、一言二言話したと思ったら元気に登って行きました。
私はズボンを膝上までにまくり、スマホと財布と車のカギををリュックに入れて歩きやすくしました。
また、トレッキングポールを少し短くしたら、いくらか歩きやすくなりました。
家族や親せきのおばさんから「わらじ銭」といって餞別を預かってきていますので、1丁目から全部の灯篭にお賽銭を入れて来ています。
最初の1丁目で下山してきた人が「南無妙法蓮華経」としっかり唱えているのを見て、私も南無妙法蓮華経と唱えて来ました。
25回もやってると誰もいない山の中でも声が出るようになります。
すでに「なりふりかまっていられない」という境地になっていて、ここからが修行なのだと思いました。
むかし、地元の住職に聞いた話を思い出しました。
【葬式の時に「7本塔婆」というのがあります。人は死んでから山を登り修行をします。7日ごとに関所があって、そこを通るためには生きている人の応援が必要なのです。それが追善供養なので、本来は7日ごとにお経を唱えて供養します。そして、7つの関所を通過した時に初めて仏になれるのです。それが7×7で49日という意味です。今は省略されていますが、家族で南無妙法蓮華経と唱えるだけでも供養になります。】
だからお寺さんご一行は白装束で登るんですね。
ここは携帯が繋がるので「どこまで行った?「大丈夫?」というラインに入ったメッセージが力になります。
12:00 晴雲坊(36丁目)
昼になってしまい焦りが生じますが、その気持ちを挫くように雨が降って来ました。
汗びっしょりでTシャツ1枚になり必死で登って来ましたが、5分座ると寒くなる事に気づきます。
10分ほどフリーズしてから、リュックにカバーをかけて、カッパを着て、おにぎり最後の1個を食べて、雨の中先を急ぎます。
10歩進んだら30秒立ったまま休みの繰り返し。ここまで来たら戻るに戻れないので行くしかありません。
これは雲の中でしょうか?霧というよりそんな雰囲気です。
あの階段を上がるのも厳しく、横の段じゃない所を選んで少しでも負担の少なくなるように歩きました。
前が見えなくなってきた時、さっきのお坊さんみたいな人が降りて来ました。
「もう少しですよ」
「まじですか?」とは言いませんでした(笑)
合掌して「ありがとうございます。道中気を付けて下さい」と人の心配などしたりして。
人に会ったら「お疲れ様」と言うのがこの山のマナー。慣れてきました。
しかし、下りのもう少しと、最後の力を振り絞ってるもう少しは違うようでなかなかゴールが見えて来ません。
1:20 和光門(46丁目)
「永遠に着かないんじゃないか?」って思い始めた時に、うっすらと何かが見えてきました。
和光門です。
こんな山奥にこれがあるのが信じられません。
というか門の奥の世界は明らかに別世界(写真から伝わりますよね)
門の前の看板に「下馬」「当山は精神修行の霊山です。参籠中は生ぐさ物は一切食さぬ様お願いいたします」と書かれています。
1:50 随身門(49丁目)
鐘楼で鐘を突いてさらに坂を上ると随身門がありました。
山頂の宿坊である敬慎院に参籠(宿泊してお勤めする事)すると、ここからご来光を見る事ができます。
やはり49丁目でした。
この達成感は経験しないと味わえない物ですね。
この時点で「また来る」と確信しました。
一生懸命登りましたが5時間半かかってしまいました。
装備を改善すればもう少し楽に登れると思いますが、何はともあれ「呼ばれない人は登れない」と言う人もいる七面山に登る事ができました。
翌日は晴れたのでここから身延山が見えました。
身延山のロープウェイを降りた所にはここを見る事ができる逢拝所があります。
私が下山してすぐに行きましたが、雲にかくれて見えませんでした。
敬慎院・一の池
随身門から階段を降りると敬慎院があります。
ここが50丁目でゴールなんですね。
御主題(御朱印)を頂くために寄っただけですが、非常に温かいもてなしをして頂きました。
もう何があっても感謝の領域なのかもしれません。
敬慎院境内から階段を降りると、七面大明神が棲んでいると言われる「一の池」があります。
これは翌日の写真ですが、到着した日は何も見えないくらいの霧で神ががっていました。
何も見えないので、池のほとりを歩いたら迷ってしまったんですけど、水面に何かリアルな音がするんです。
「何かがいるけど見えない」という状況で、そういう現象が起きる事があると後で知りました。
七面天女がいたのかな?
奥之院へ
地図アプリで見ると一の池の近くに奥之院があるようになっていたので、探し回ってしまってロスタイムになってしまいました。
霧で見渡せなかったので。
道しるべ通りに坂を下って行きましたが「このままじゃ下山しちゃう」って思うような所まで、来て不安になってしまって敬慎院まで戻りました。
ちょうど到着した人に聞いたら「そのままもう少し行けば奥之院ですよ」という事で、また来た道を戻りました。
さっき折り返した場所を過ぎると二の池がありました。
誰もいない山の中でこの場所に立ち寄った事は、私の人生の中で非常に貴重な経験でした。
奥之院に着いたのは3時頃でした。
敬慎院から30分位歩いたと思います。
奥之院での経験は素晴らしいものでした。
奥之院での体験はこちらです。
★七面山奥之院の宿坊で参籠し御来光を拝むという貴重な体験
https://siroyakiblog.com/shichimenzan-okunoin/
まとめ
敬慎院から奥之院までけっこう下って来ましたので、下山は北参道かと思っていましたが、奥の院の方に聞いたら「私は敬慎院まで登ってから表参道を下ります」との事でしたので、私もそうする事にしました。
3時間で下山する事ができましたが、途中から太ももが痛くなって段を降りられなくなってしまいました。
そんな時にトレッキングポールが太ももへの負担を軽減してくれて、登山靴がゴロゴロとした石を踏んでも足首を守ってくれました。
登山初体験は多くの事を学ぶ場でした。
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